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慢性的に症状を繰り返す
医師の指示に従って薬剤を使用
皮膚に強いかゆみを伴う湿疹ができる「アトピー性皮膚炎」。
よくなったり、悪くなったりを繰り返しながら、その症状が、慢性的に続きます。
新生児期からの保湿に効果
国内で行われた疫学調査などの結果によれば、アトピー性皮膚炎の国内の有病率は10%弱と思われます。
その多くは乳幼児期に発症します。かつては、50歳代以降の有病率は非常に少なかったのですが、近年は、60歳代や70歳代の患者さんも珍しくなくなってきました。
新生児期から乳児期にかけて湿疹が出ると、ご家族はアトピー性皮膚炎を発症したと心配になることがあると思いますが、そもそもこの頃はまだ肌が弱く、いろいろな刺激によって湿疹が出やすい時期です。
多くの場合は、乳児湿疹といわれる一時的な湿疹なので、過度に心配する必要はありません。
また、乳幼児期にアトピー性皮膚炎を発症しても、成長とともに軽快することも珍しくありません。湿疹がある場合は治療をして、皮膚をきれいな状態で維持することが大切です。
また14年には、国立成育医療研究センターの研究などで、新生児期から保湿剤を塗布することによってアトピー性皮膚炎の発症リスクがおよそ3割低下することが分かりました。
新生児期から乳児期にかけてスキンケアをしっかり行うことが、アトピー性皮膚炎の発症を予防する可能性があるということです。
この病気は、多因子性の疾患で、はっきりとした原因は分かっていませんが、皮膚の保湿を維持する機能に障害があったり、アレルギー体質だったりします。
いずれも、皮膚のバリア機能が損なわれて炎症が起こっていると考えられます。
近年は、皮膚のバリア機能に関わる「フィラグリン」というタンパク質の遺伝子の変異や、「インターロイキン4」や「インターロイキン13」といったサイトカイン(タンパク質)が関与する免疫系の異常などが分かっています。
また、大人になってからであれば、環境の変化などによって発症したり、悪化したりすることが多いように感じています。
いずれにせよ、一つの原因ではなく、いくつかの原因が重なって発症するので、治療においても複数の要素を考慮する必要があります。
重症度は血液検査も参考に
主な症状はかゆみと湿疹です。湿疹は、子どもであれば、手首や肘・膝の裏、首などにできることが多いです。
大人になると、これらとは別の部位にも湿疹が現れます。
こうした症状が、慢性かつ反復性に起こるかどうかが診断には重要で、「乾燥肌」や「尋常性魚鱗癬」「皮膚リンパ腫」など他の皮膚疾患との鑑別も必要です。
基本的に乳児であれば2カ月以上、その他であれば6カ月以上を慢性としています。
疾患の重症度は皮膚の状態をみて判断されますが、血液検査も参考になり、血中の「IgE抗体値」や「LDH(乳酸脱水素酵素)値」、あるいは「TARC」という炎症物質のタンパク質の値を調べます。
治療には三つの柱がある
治療は①薬物療法②スキンケア③悪化因子の除去の3本柱になります。
これらはいずれも重要で、症状の程度などによって適切に組み合わせて行います。
次に、それぞれの内容について述べていきます。
①薬物療法
炎症を抑えるために「ステロイド外用薬」もしくは免疫調整薬である「タクロリムス軟こう」を使用します。
ステロイド外用薬の剤形には、軟こう・クリーム・ローション・テープ剤などの種類があります。また、強さの指標を示すランクがありますので、重症度や部位などによって選択します。
その際に大切なのは、医師の処方・指示通り、適切な量を使用することです。目安となるのは、「フィンガー・ティップ・ユニット(FTU)」といって、第2指(人さし指)の先から第1関節部までの量(約0・5グラム)で、成人の手のひら2枚分の面積に塗るのが適量とされています。ステロイドの副作用に対する忌避感から、自身の判断で量を減らすと十分な効果が得られません。
また、皮膚に塗った外用薬を、皮膚内部の炎症に十分な効果を発揮させるためにも、炎症のある範囲だけでなく、その周囲にも塗るようにしてください。加えて、かゆみが強ければ、「抗ヒスタミン薬」「抗アレルギー薬」などを用いて、かゆみをコントロールします。
そうした薬剤で効果がない重症成人患者に対しては、「シクロスポリン内服薬」という免疫抑制剤を短期間服用することもあります。
②スキンケア
アトピー性皮膚炎では、角層の水分含有量が低下して皮膚が乾燥し、バリア機能も低下しています。
保湿用の外用薬である「ヒルドイドローション」「ヒルドイドクリーム」などで保湿をするようにします。入浴後の保湿外用薬の使用が効果的です。
③悪化因子の除去
アトピー性皮膚炎を悪化させる因子には、食物、汗、ダニ、ほこり、金属などのアレルゲンがあります。
疾病に対するアレルギーの関与が分かれば、それらを極力避けるようにします。
近年、湿疹の悪化を繰り返す症状に対して、寛解導入後(症状が治まった後)にも、保湿外用薬によるスキンケアに加えて、ステロイド外用薬やタクロリムス軟こうを断続的に使う「プロアクティブ療法」が行われるようになっています。
湿疹が良くなっても、すぐにぶり返してしまう場合、一見すると、きれいに見える皮膚でも、内部には炎症が残っています。
そして、湿疹が良くなっても薬を断続的に塗布し、皮膚に炎症のない状態を長期間維持することで、皮膚の内部の炎症を抑え、再燃を防ぐ治療法です。
症状に応じて、塗布の範囲や期間、薬剤のランクなどを決定します。
先に述べた血液検査でのTARC値が十分に下がっているかどうかも、治療効果を判定する一つの目安になります。
現在、アトピー性皮膚炎の新しい治療薬として、外用薬だけでなく、内服薬や注射薬の開発も進められていますので、今後、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢は増えていくと予想しています。
これまでの臨床経験からも、きちんとした治療を継続することで、症状のコントロールは可能であり、「生活の質(QOL)」も大きく改善します。
多くの患者さんが諦めることなく、医師の指示に従った適切な治療を行い、もっともっときれいな肌で毎日を過ごしていただきたいと思います。
広島大学大学院・医歯薬保健学研究科(皮膚科学)の田中暁生准教授(医学博士)