クラーク整骨院（厚別森林公園新札幌交通事故治療） | 日記 | 起立性調節障害

長い目で見て、焦らず治療を
朝、一定の時間に起きることから


　自律神経の不調で,起床や起立時、主に脳の血圧が下がって、めまいなどを発症し、朝、起き上がれなくなる「起立性調節障害」。


体内時計をリセット　自律神経を整える

　主な治療法としては、説明療法と言いますが、「朝起きることで体内時計がリセットされ、自律神経が乱れにくくなる」という仕組みを理解してもらいます。“遅寝遅起き”は、睡眠の時間が後退している障害であることも伝えます。
　取り組みとしては、生活リズムを改善します。特に「朝、起き上がる時間を一定にする」ことが、大きなポイントです。うつ病を併発しているケースなど、一概には言えないのですが、重い症状でなければ、「毎朝、一定の時間に起き続けられるなら、数カ月で治ります。できないなら数年かかることもあります」と説明します。
　治療中は、土日も同じ時間に起きます。「起床の後にやることは違うけど、起床の時間は一定にしようね」と伝えます。
　「朝、起き上がれない→自律神経が乱れる→夜、神経が活性化して寝付きが悪くなる→眠れなくて夜更かしする→さらに朝、起き上がれなくなる」という悪循環から脱し、「朝、一定の時間に起き上がる→自律神経が整う→夜、早く眠れるようになる→朝、起き上がれるようになる」というサイクルに変えるのです。

　朝、起き上がることが難しい場合は、無理せず、できることから行うことです。例えば、起き上がる時は、「うつぶせになる→おでこを下に付ける→お尻を上げる→手を付いて上体を起こす」という流れで、30秒以上かけてゆっくり行ってください。
　頭を上げて立ち上がると、脳の血圧が下がって気分が悪くなる可能性が高まります。気分が悪くなると、なかなか回復しませんので、座った体勢から立つ時も、頭を下げて立つことを心がけてください。


トイレも頭を下げて“ゆっくり”向かう

　起床してすぐトイレに駆け込み、倒れる子もいます。トイレに行く時も、「一息ついて、頭を下げたまま、ゆっくり歩き始めること」が大事です。
　そのためにも、できるだけ“早起き”をして、時間的なゆとりを確保しましょう。
時間に追われるストレスも減ります。
　起きたら必ず「朝食を取ること」も大切です。いわば「規則正しい生活を送ること」が、回復への近道なのです。なお、血流を増やすために、水分や塩分は多めに取ってください。

　スマホなどで夜更かししてしまう場合は、「夜更かしをやめれば、朝、起き上がれる」といった単純な仕組みではありません。就寝よりも、まず「朝、一定の時間に起きる」ことを心がけてください。

登校は体力回復後　筋力低下で症状悪化

　朝起こす時に、「カーテンを開けて朝日を入れる」「何度か声かけをする」「怒らない」「夜は早めの消灯を促す」ことなどができるとよいですね。
　不調の時に登校させると、多くは逆効果になります。体力が回復してから、登校を促します。電車通学なら、座れるように混雑する時間は避け、午後登校や保健室登校から試みるのもよいでしょう。
　暑いと血管が緩み、血圧が上がりにくくなります。体育の授業を見学する場合、夏は日陰や室内で過ごすようにします。そのためにも、普段から学校と連携を取り、症状や対応を共有することが必要です。
　適度な運動は、着実な治療効果が見込めます。じっとしていたり、ずっと横になっていたりしていると、筋力が低下し、血流がより悪くなります。

　
汗ばむ程度の散歩　頑張り過ぎに注意

　生真面目な子が多いので、頑張り過ぎは禁物です。
「学校に行けない→授業を受けられない→学習が遅れる→ストレスで症状が悪化する」といったように重く受け止める子が、とても多いのです。運動を頑張り過ぎ、反動で翌日何もできず、“自分はだめだ”と落ち込むケースもよくあります。運動の負荷は、少しずつ上げていくことが大事です。
　「人間は多少、いい加減な面があるくらいがちょうどいいんだよ」と話し、心を軽くすることもあります。

　症状のレベルによってはミドドリンなどの昇圧剤を内服する場合もあります。胃がムカムカするなどの副作用がありますので、医師の指示に従って服用してください。圧迫ソックスや加圧式腹部バンドなどの装具を着用して、血流の調整を試みることもあります。

長期休みで多く発症　コロナ禍でも3割増

　この病は、起床時間が乱れやすい冬休みや夏休み、ゴールデンウイークなど、長期の休み明けにとても多く発症します。
　コロナ禍でも、新規患者が増えました。オンライン授業などが普及し、朝、一定の早い時間に起きて動く必要がなくなったためと考えています。大分こども病院では、コロナ禍の前後を比較すると、3年間で34％増加しました。他の病院でも、3割前後増えたという報告が上がっています。

「毎朝、一定の時間に起きて学校に行く」というリズムで過ごすことが、思春期の子の自律神経にとって、いかに大事だったかを示しています。
　大人になれば症状の多くは治まります。しかし、それだけが治療の目的ではありません。

大人になる前の強い体をつくる機会

　治療の目的は、「症状が出ても乗り越えられる体」「ストレスに耐えられる、踏ん張りがきく健康な心身」をつくることです。
　大人になっても日常の心身や環境などの“波”は起こり続けます。治療は規則正しい生活リズムをつくり、波を乗り越えられる体づくりの“良い機会”だと、捉えてはいかがでしょうか。

　気になる人は、かかりつけの小児科で結構です。症状が重い場合は、専門的に診療できる病院を紹介してもらえると思います。
　症状は、治療への「心がけ」「努力」で必ず改善しますし、回復は確実に早まります。ただ、時間を要するので、焦らず、長い目で見て治療してください。

医療法人藤本育成会　藤本保会長


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