クラーク整骨院（厚別森林公園新札幌交通事故治療） | 日記 | 分子標的薬の治療が急拡大

進行期肺がんに効果
遺伝子検査の普及が鍵に

　肺がんの薬物治療が様変わりしています。がんの特徴に応じた「分子標的薬」が相次いで実用化され、経過の悪かった進行期の肺がん（非小細胞性肺がん）でも、余命を年単位で延ばす効果が報告されています。課題は、効き目のある分子標的薬があるかどうかの検査を受けていない患者も多いことで、より一層の普及啓発が鍵になります。患者団体などは検査の実施状況を調査・公表し、検査拡大を訴えています。

適切な患者に届けば年単位の生存延長も

　分子標的薬は、それぞれのがんに特徴的な遺伝子異常によって働く分子の働きを阻害する薬です。臨床現場に順次導入され、現在では9種類の遺伝子（ドライバー遺伝子）の異常に対して20種近い薬が保険適用になりました。
　日本肺癌学会で薬物治療に関する委員会の委員も務める神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科の池田慧医長は、この薬の登場によって、特に進行期の肺がん治療が大きく変わったと話します。
　「ステージ4の進行肺がんの臨床にもたらしたインパクトは大きく、既に治療選択の柱になった。手術後の再発抑制にも使われ、効果を発揮する場面が増えている」
　近畿大学の中川和彦特任教授（腫瘍内科学）によりますと、従来は最も進んだステージ4の肺がんは、5年生存率が5％程度と極めて悪く、細胞傷害性抗がん薬を使っても、有効期間は6カ月程度で、ほかの薬に次々切り替えるしかなかったといいます。「分子標的薬は全員に有効なわけではないが、適切な患者に届けば、1剤で年単位の生存延長が得られている」と話します。

がん組織を調べる診断が必須

　種類によって差はありますが、分子標的薬は、副作用も細胞傷害性抗がん薬と比べて少なく、対処しやすい薬です。持病がある人や高齢者、状態が悪い患者でも効果を期待できる可能性があります。分子標的薬以外に「免疫チェックポイント阻害薬」も、複数が治療に組み込まれ、肺がん治療の選択肢は格段に増えたといいます。
　一方で、分子標的薬を使うには、それぞれの薬が標的とする遺伝子異常を持っているかどうか、がん組織を調べる「コンパニオン診断」が必須です。
　近年、複数の遺伝子異常を一度に調べる検査も可能になりましたが、そのためには、十分な量のがん組織を摘出する必要があります。気管支鏡や胸腔鏡で採取できればいいのですが、がんの大きさや部位、患者の状態によっては難しいケースもあります。

根治は難しい　薬物治療と合わせて

　肺がん患者を支援する一般社団法人アライアンス・フォー・ラング・キャンサー（A4LC）と病院経営支援のグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン（東京）は、保険請求に基づいて、国内の入院患者の大半をカバーする診療データベース「DPC」を利用して全国204の医療機関での普及状況を調べました。
　その結果、ほぼ全ての医療機関が遺伝子検査を実施し、その症例数は、ここ1、2年で急増。2022年には5項目を検査する症例が半数に達し、3分の2は複数の検査をしていました。
　神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科の池田慧医長は「実施割合に地域や病院の大小で差はなく、日本の治療水準の高さを示した。一方で、4分の1の症例は遺伝子検査を受けておらず、誰でも最適な治療が受けられるよう一層の普及が求められる」と話します。
　ただし、分子標的薬には、腫瘍を縮小させたり増悪を防いだりする効果はあるものの、根治させるのは依然難しい現状があります。
　近畿大学の中川和彦特任教授は「分子標的薬を中心に、どういった治療を組み合わせれば『治癒』できるかが今後の課題だ」と指摘した上で、「早期発見、早期治療が最も大切で、その上で最新薬物治療を組み合わせることが望ましい」と、がん検診の積極的な受診を促しました。


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